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(44・文太)

「拓海もすっかり年頃の娘さんになっちまったな」
「そうかぁ? 全然だぜ」
同じ時刻、文太は政志の工場でいた。
一緒に酒を飲み、その後政司の工場の事務所に場所を変え、遅い時間のニュースを見ながら煙草を吹かす。気心の知れた仲だからこそだ。
政志はこの間、文太に頼まれて届け物をしに来た拓海が、就職したとたんに大人びて見違えるようだと褒めた。
「まだまだあいつはガキだよ」
笑ってそれを否定しながらも、文太の心中はあまり穏やかではなかった。

(オレが一番わかってるっつーの……)
タバコを歯嚙みしながら、文太は小さくため息をついた。

このところ、拓海が随分と大人びてきた。
それは当然のことなのだが、……文太には頭の痛いことであった。
拓海が『娘』から、『大人の女』になっていく。それにつれて、文太の心には、明らかに禁忌と言っていい感情が生まれつつあった。
それを娘相手に抱くことがいけないということは頭では分かっている。

(あんまり綺麗になられちゃこっちがもたねえよ。それにうちは……)

文太には懸念が一つ、あった。
それは藤原家にまつわる、血の宿命ともいえるものだった。


政志の工場を後にして、文太は歩いて家に帰った。酔い覚ましのつもりだった。
工場から家までの間には、薄暗い細い通りがある。
そこを歩いていると、声を、かけられた。

「遅いじゃん、オヤジ」

「……あ?」
後ろからの声だった。
文太が振り返ると、そこには拓海が立っていた。
「遅いから迎えに来てあげたの」
ふふ、と笑う拓海に、文太はすまねぇな、と言いかけてそして……はっとした。
「お前、」
「オヤジ」
「来るな!」
近づいてきた拓海に、思わず声を上げた。
「なんで?」
拓海は小首を傾げた。
「……お前、拓海じゃねぇな……」
文太には分かった。
分かってしまった。
そして悟った。
自分の「思い」が、誤った方向へと蓄積してしまっていたことを。

「……なんだ、わかるんだ」
小悪魔のような笑みを浮かべて、「拓海」は文太の前に来た。
そして背伸びをしてーーー文太に、口づけた。
「正解。オレ、拓海だけど拓海じゃないよ」

「やっぱり……」
「本物の拓海が白い拓海なら、オレは「黒い拓海」ってとこかな」

(続く)


白黒シリーズです^^
黒登場っ

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