日常やサイトのこと。
05/12
2025
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03/26
2014
(白・♀拓海)
「へぇ……昔のオヤジってこんなんだったんだ……」
「ああ、ちょうど今の拓海くらいのころだな」
仕事帰り、ガソリンを入れに、そしてイツキや池谷の顔を見に、祐一のスタンドへ寄った。閉店が近い時間だったこともあって人気もほとんどなく、自然な流れで拓海は事務所で祐一にコーヒーをごちそうになり、イツキや池谷と近況を話し合った。
池谷からは秋名スピードスターズのメンバーが三人増えたという話を、イツキハチゴーをまた弄るんだという話を聞き、拓海は代わりにプロジェクトDの次のバトルの予定を話した。
そこへレジを締め終えた祐一が加わり、「昨日、家の掃除をしていたらこんなものを見つけたんだ」と、古い写真を数枚、見せてくれた。
それは祐一と政志、そして文太がまた若いころのものだった。
拓海にとっては、初めて見る文太の若かりし頃の写真だった。
今と少しだけ面影の違う秋名の峠で、それぞれの車の前に立つ三人。今よりもスリムな祐一、髪がもっとあった政志、そして、随分ととがっている感じのする文太。
色あせかけた写真の中には、凡そ25年前の三人がいた。
「店長随分若いっすね」
池谷が目をぱちくりさせた。
「店長これ乗ってたんすか! すっげー」
イツキは祐一の後ろに映る車に驚いているようだ。
「ああ、初めて買った車だよ」
当時は三人でつるんでいて、よくあちこちに走りに行っていたという話は何度か聞かされていたが、実際その写真を見るのは初めてのことだった。
「オヤジ、なんか悪そう……」
髪をオールバック気味にして、まだ未成年であろうにタバコを咥えて、ついでに派手目のスカジャンを着た文太はどう見たってとんがっている。
「確かに、拓海のオヤジさん、ちょっとすごいですよね」
池谷が笑った。
「ほんとだな。店長、どうだったんですか? 拓海のオヤジさんってこの頃……」
イツキが尋ねると、祐一は笑って「そりゃすごかったよ、その頃の文太は」と予想通りの返事だった。
「走りもすごかったけど、文太は喧嘩っ早いし口も達者だったし、敵も多かったもんだよ。峠じゃ車でバトってその後殴り合いなんてこともあったな……」
「ほんとですか、店長……」
(うちのオヤジ、まだあれで随分丸くなった方なんだ……)拓海はため息をついた。
「まあ名実ともに群馬エリアじゃナンバーワンだったからな。あの頃は血の気の多い走り屋が多くてな……」
昔を懐かしみながら、祐一はうなずいた。
「へぇ……」
古い写真の一枚を、拓海は祐一からもらった。
というより、文太に渡してほしいと預かったのだ。
文太は引っ越しを何回か繰り返すうちに古い写真を無くしたらしいから、よかったらこれを上げて欲しいと祐一に言われたのだ。実際、拓海も文太の若いころの写真は見たことがなかった。
帰宅すると、文太はまだ帰っていなかった。
「何だよ、オヤジったらまた飲みに出てんだ……」
店をさっさと閉めた文太は、売れ残りの豆腐と厚揚げを手土産に行きつけの居酒屋で一杯ひっかけているようだ。
「ったく、ダメオヤジなんだから……」
祐一から預かった写真をちゃぶ台の上に置くと、拓海はその前に座った。
「……若いころのオヤジかぁ……」
写真はちょうど今の拓海と同じ19の頃だという。
免許取りたてにしては随分な貫禄の文太に、拓海はつい目がいってしまう。
(結構カッコイイかも……)
文太の帰りを待つうちに、拓海はいつしかちゃぶ台に伏して眠ってしまった。
「おい、起きろよ、拓海」
「……うん、……」
肩をゆすられ、文太の声がして。
拓海はゆっくりと目を覚ました。
「あれ、あ……オレって寝てた……?」
目を開けると明るい。
自分が転寝をしていたことに気づいて、拓海は慌てて目を覚ました。
「いっけない、お風呂しなきゃ……」
「風呂ならもう準備したぜ」
「えっ、ありがとオヤ……ジ……?」
振り返った拓海は、テレビの前で胡坐をかいている「文太」の後姿を見た瞬間、声を失った。
「……!」
その声は確かに「文太」だった。
が、後姿は「文太」ではなかった。
派手なスカジャン。今よりも細い肩。
白髪のない髪。
「おう、拓海」
振り返った顔は、そう。
あの写真の中の、若い「文太」だった。
「え、ええっ……!」
拓海は慌てて、ちゃぶ台に置いた写真を手に取った。
「え、あ、え、っ……え、」
「なんだよ」
振り返った「文太」が、膝で寄ってきて、拓海の手にしている写真を取り上げた。
「オヤジ……?」
「ああ、そうだけど」
ニンマリと笑った「文太」は、確かに、件の写真の中の「若い頃の文太」そのものだった。
「お前のオヤジだぜ、拓海。ただし、19歳のな」
「文太」は古い写真をひらひらとさせながら、にやりとした。
(続く)
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Twitterでビルさん、ポピーさんの19歳文太さん絵やネタに触発されまして……。
44歳文太さんと19歳文太さん、19歳♀拓海も二人に分裂? してしまうシリーズです。ブログにて思いついたときに書き書き予定です。
19歳文太さん×24歳涼介さんとかいいですよねじゅるり。
「へぇ……昔のオヤジってこんなんだったんだ……」
「ああ、ちょうど今の拓海くらいのころだな」
仕事帰り、ガソリンを入れに、そしてイツキや池谷の顔を見に、祐一のスタンドへ寄った。閉店が近い時間だったこともあって人気もほとんどなく、自然な流れで拓海は事務所で祐一にコーヒーをごちそうになり、イツキや池谷と近況を話し合った。
池谷からは秋名スピードスターズのメンバーが三人増えたという話を、イツキハチゴーをまた弄るんだという話を聞き、拓海は代わりにプロジェクトDの次のバトルの予定を話した。
そこへレジを締め終えた祐一が加わり、「昨日、家の掃除をしていたらこんなものを見つけたんだ」と、古い写真を数枚、見せてくれた。
それは祐一と政志、そして文太がまた若いころのものだった。
拓海にとっては、初めて見る文太の若かりし頃の写真だった。
今と少しだけ面影の違う秋名の峠で、それぞれの車の前に立つ三人。今よりもスリムな祐一、髪がもっとあった政志、そして、随分ととがっている感じのする文太。
色あせかけた写真の中には、凡そ25年前の三人がいた。
「店長随分若いっすね」
池谷が目をぱちくりさせた。
「店長これ乗ってたんすか! すっげー」
イツキは祐一の後ろに映る車に驚いているようだ。
「ああ、初めて買った車だよ」
当時は三人でつるんでいて、よくあちこちに走りに行っていたという話は何度か聞かされていたが、実際その写真を見るのは初めてのことだった。
「オヤジ、なんか悪そう……」
髪をオールバック気味にして、まだ未成年であろうにタバコを咥えて、ついでに派手目のスカジャンを着た文太はどう見たってとんがっている。
「確かに、拓海のオヤジさん、ちょっとすごいですよね」
池谷が笑った。
「ほんとだな。店長、どうだったんですか? 拓海のオヤジさんってこの頃……」
イツキが尋ねると、祐一は笑って「そりゃすごかったよ、その頃の文太は」と予想通りの返事だった。
「走りもすごかったけど、文太は喧嘩っ早いし口も達者だったし、敵も多かったもんだよ。峠じゃ車でバトってその後殴り合いなんてこともあったな……」
「ほんとですか、店長……」
(うちのオヤジ、まだあれで随分丸くなった方なんだ……)拓海はため息をついた。
「まあ名実ともに群馬エリアじゃナンバーワンだったからな。あの頃は血の気の多い走り屋が多くてな……」
昔を懐かしみながら、祐一はうなずいた。
「へぇ……」
古い写真の一枚を、拓海は祐一からもらった。
というより、文太に渡してほしいと預かったのだ。
文太は引っ越しを何回か繰り返すうちに古い写真を無くしたらしいから、よかったらこれを上げて欲しいと祐一に言われたのだ。実際、拓海も文太の若いころの写真は見たことがなかった。
帰宅すると、文太はまだ帰っていなかった。
「何だよ、オヤジったらまた飲みに出てんだ……」
店をさっさと閉めた文太は、売れ残りの豆腐と厚揚げを手土産に行きつけの居酒屋で一杯ひっかけているようだ。
「ったく、ダメオヤジなんだから……」
祐一から預かった写真をちゃぶ台の上に置くと、拓海はその前に座った。
「……若いころのオヤジかぁ……」
写真はちょうど今の拓海と同じ19の頃だという。
免許取りたてにしては随分な貫禄の文太に、拓海はつい目がいってしまう。
(結構カッコイイかも……)
文太の帰りを待つうちに、拓海はいつしかちゃぶ台に伏して眠ってしまった。
「おい、起きろよ、拓海」
「……うん、……」
肩をゆすられ、文太の声がして。
拓海はゆっくりと目を覚ました。
「あれ、あ……オレって寝てた……?」
目を開けると明るい。
自分が転寝をしていたことに気づいて、拓海は慌てて目を覚ました。
「いっけない、お風呂しなきゃ……」
「風呂ならもう準備したぜ」
「えっ、ありがとオヤ……ジ……?」
振り返った拓海は、テレビの前で胡坐をかいている「文太」の後姿を見た瞬間、声を失った。
「……!」
その声は確かに「文太」だった。
が、後姿は「文太」ではなかった。
派手なスカジャン。今よりも細い肩。
白髪のない髪。
「おう、拓海」
振り返った顔は、そう。
あの写真の中の、若い「文太」だった。
「え、ええっ……!」
拓海は慌てて、ちゃぶ台に置いた写真を手に取った。
「え、あ、え、っ……え、」
「なんだよ」
振り返った「文太」が、膝で寄ってきて、拓海の手にしている写真を取り上げた。
「オヤジ……?」
「ああ、そうだけど」
ニンマリと笑った「文太」は、確かに、件の写真の中の「若い頃の文太」そのものだった。
「お前のオヤジだぜ、拓海。ただし、19歳のな」
「文太」は古い写真をひらひらとさせながら、にやりとした。
(続く)
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Twitterでビルさん、ポピーさんの19歳文太さん絵やネタに触発されまして……。
44歳文太さんと19歳文太さん、19歳♀拓海も二人に分裂? してしまうシリーズです。ブログにて思いついたときに書き書き予定です。
19歳文太さん×24歳涼介さんとかいいですよねじゅるり。
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