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日常やサイトのこと。

05/11

2025

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10/02

2014

外階段、と言えば聞こえは良いが、古びて半分朽ちている。よく見ればところどころで向こうの景色が見えていた。
それをカンカンと音を立てて上りきると、不釣合いなくらい新しい扉がある。その向こうが、『文太』の新しい住まいになる。
「おー、すっげー綺麗じゃん!」
扉を開けると別世界だ。
真新しいフローリング張りのワンフロアが広がり、『文太』は歓声をあげた。
ここは政志の工場の三階だ。先年亡くなった政志の婆さんが、遊ばせておくのはもったいないから貸家にすればいい、と倉庫だったこの三階を改装していたのだ。中身は綺麗だけれど、下が自動車工場、おまけに外からの見てくれが良くないこともあって、借りるのは『文太』が初めてだった。
「汚すんじゃねぇぞ、ほら上がれ」
後ろから文太にせっつかれ、狭い玄関で『文太』は靴を脱いだ。上がり框が以外に低く、あやうく土足のままフローリングに踏み出すところだった。
必要な家電と家具はテレビと冷蔵庫にベッドにソファにテーブルと、一通りは文太が昨日のうちに手配をしてそろえていた。といっても、降って沸いてきたようなこの分身のために使えるカネなどあまりあるわけもなく、リサイクルショップで値切ってきたものばかりで、色も大きさもちぐはぐだった。
そのあたりは文太から『文太』に吶吶と説いたから、文句は言わせない。
「すっげー、お前んちより広くね? これ」
『文太』の悪気のない言葉に、文太は舌打ちした。
「うるせー」
「拓海の部屋の三倍くらいあるぜ! うはっ!」
嬉しそうに、『文太』はベッドにダイブした。
「こら、ガキみてえなことするんじゃねえ」
文太はベッドに腰掛けた。
「バイトはちゃんと行けよ。サボったら承知しねえからな」
「わかってる」
働かざるもの食うべからずというわけで、『文太』は祐一の店でバイトできることになった。
それも、文太のおかげだ。
「バイト代はオレが管理する」
「ええっ、オレにくれねえの?」
「お前じゃ無駄遣いしちまうし、第一通帳も作れねぇんだよ」
そう、この世界に本来いない『文太』には、身分を証明するものは何一つとしてない。
だから、借りられるのもこんな、文太の伝手を頼るしかないし、バイトもそうだ。
お金のこともまた然り、だ。
「サボったら祐一から連絡来るからな」
「サボらねえよ」
「それと無免許だからなお前は。車は運転するな」
「えー……つまんねぇの」
「夜の峠以外では、な」
仰向けにひっくりかえり、『文太』は「あーでもここ最高」と両腕を天井に向かって伸ばした。
確かに、狭い藤原豆腐店よりは断然、ここでのひとり暮らしがいいに決まっている。
拓海に気を使うこともない。
「女連れ込むなよ」
「分かってる。あ、この辺りってスーパーある?」
「ある。さっき通ったコンビニを左に曲がると肉屋とスーパーがある」
「わかった。あとで行ってくる……なあ、」

「……何だよ」
一瞬の間があった。

『文太』の手が、文太の服の裾を掴んで揺すった。

文太が『文太』を見ると、いたずらっ子のような顔をした自分の分身が、細い目で見上げている。

「おっさん、もう帰るんだろ? だったらその前に、シようぜ」

誘いの言葉はいつだって、色気もそっけもない。
「政志が、」
下の工場で作業をしている。後であがっていくからと言っていた。
来るかもしれないけれど――誘われた瞬間、スイッチが入った。
そうしたらもう、止まれない。


文太は『文太』に覆い被さり、生意気を叩く口をキスで塞いだ。
「……っ、」
「タバコ勝手に吸うんじゃねえよ」
キスの味はタバコ臭かった。『文太』は文太のタバコをすぐに拝借する。
「けちくせぇ」
「今は高級品なんだよ、タバコは……」
昔と違ってな、と言いながら、文太は分身の服を剥いていく。
抱かれるつもりだから素直に脱がされ、昨夜の痕を残す肌があらわになっていく。
「別々に暮らしたら、溜まったときどうすんの?」
トランクスを脱がされながら『文太』が訊ねる。
「そんときゃここに来る」
文太はトランクスの下で屹立する若い雄をきゅっと握りこんだ。
「ぁあ、っ、」
すぐにこすられ、『文太』が色のついた声を出す。
「なぁっ、キス……」
ねだられ、文太はもう一度キスをくれてやる。『文太』はキスが好きだ。
『文太』が文太の頭を抱きしめ、腰をくねらせ、もっと、と要求する。
下では工具の音が、エンジンの音が、政志が若い整備士をしかる声が聞こえている。暫くは上がってこない、だろう。
「うっ、ふ……」
文太の指が若い蕾に侵入した。締め付けの強いそこは、堪らなくいやらしい。
「ナカで出すと後が大変だからな……口で、飲めよ」
言い聞かせると、『文太』がこくんと頷く。
「だったらやってやるよ」
「あ・ああぁっ……!」
年季の入った文太自身が、『文太』に侵入する。
カーテンのついていない窓から、夕焼けが差し込む。
窓枠の形に、十字架の影を、ベッドの上の二人に落しながら。
「ぶんたっ、ぶんた……っ、もっと、」
『文太』は突かれながらも求め、乱れた。
「ああ、分かってるからじっとしてろ……おっさんになると要求どおりいかねえんだよ」
浅いところで律動を繰り返しながら、文太は苦笑する。

なかなか消えようとしない分身のために、こんな家まで借りてやって。
職まで探してやって。
まったく、どういうことなのか。
神様というものがいるのなら問い詰めたいところだと、昨夜文太はこの家の家賃のために下ろしてきたカネを数え、すっかり寂しくなった通帳の残高に肩を落とした。
いったい、なんの意味があって、と…。
それでも、この存在に求められれば応じてしまうのは悲しい男の性だろう。
「っ、次に来る時……っは、」
「あぁ?」
「コンドーム……持って来いよっ……」
「ああ、そうだな……ほら、口開けろ」
「あ、が…あっ」
開かせた『文太』の口に、抜いた分身を宛がうと、白濁をその中に。
こんな時だけ『いい子』だから、『文太』はそれをおとなしく飲み干す。
そして文太の竿を、舐めて、綺麗にする。
「コンドームと……ローションだな」
つぶやきながら、文太は『文太』の口の端についた白濁を指ですくった。
下で政志が『三階にいってくらぁ』とかみさんに言っているのが聞こえた。
「おい、来るぞ」
「うっそ、マジかよ……」
余韻など何もない。
二人は慌てて服を着た。

(終)


44×19を少しばかり。

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拓海は、自分の隣を見た。
そこには自分そっくりの「拓海」がいる。
顔も形も何もかもそっくりで、ただ一つ違うところと言えば自分よりもよっぽど、明るくてにこにこしていて、物おじしなさそうで。穿いているスカートは下着が見えそうなほどギリギリ短いし、胸元が大きく開いたカットソーは胸を大きく強調している。
(……すご……)
本当に自分の「分身」なのかと、拓海は疑う。
一方の「拓海」は、ニコニコして、拓海が出したお茶を飲んでいる。
「まあそういうわけで……うちはこういう家系だってことだ」
目の前の、文太が苦虫を噛み潰したような顔で、絞り出した結論。
その隣には、文太の若い頃、つまり、19歳の「文太」がいる。写真に映っていたのと同じだ。

「家系…」
拓海はその言葉を反芻した。
「そ、家系ね」
「拓海」が頷いた。

「家系か。ま、そういうことだよなあ」
うんうん、と腕組みをして「文太」も同意する。

「家系……」

文太が言った「家系」とは。
藤原の家系は、昔からどういうわけか妙なことに、誰かに強く思われたり、また、身内同士で強く思い合うと、「分身」ができるのだという。
拓海は誰かに思われ、本来の拓海とは全く正反対の「分身」が現れた。
文太もまた同じだという。
ただ、拓海とは違って、若い頃の「文太」だ。

「……そう……」
拓海は俯いた。

(オレがあんなこと思ったから……?)
ちらりと上目づかいで見た、文太の隣の「文太」。文太の煙草を拝借して火をつけている。
(オレ、そんなにオヤジのこと……嘘……)
かあっと、顔が赤くなった。

文太は目の前にいる二人の娘に、ため息をついた。自分の煙草の最後の一本を分身の「文太」が拝借したのも気にならぬほどに。
(まいったな……まさか拓海が二人になっちまうとは……そんなことにならねえように木をつけていたつもりだったんだけどよ……オレは、拓海を……)

「なあ、オレ、腹減った!」
「はあ?」
突如、「文太」が声を上げた。
「あ、オレもッ」
続いて「拓海」も手を上げた。
「な、メシ作ってくれよ」

続くよっ。

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(44・文太)

「拓海もすっかり年頃の娘さんになっちまったな」
「そうかぁ? 全然だぜ」
同じ時刻、文太は政志の工場でいた。
一緒に酒を飲み、その後政司の工場の事務所に場所を変え、遅い時間のニュースを見ながら煙草を吹かす。気心の知れた仲だからこそだ。
政志はこの間、文太に頼まれて届け物をしに来た拓海が、就職したとたんに大人びて見違えるようだと褒めた。
「まだまだあいつはガキだよ」
笑ってそれを否定しながらも、文太の心中はあまり穏やかではなかった。

(オレが一番わかってるっつーの……)
タバコを歯嚙みしながら、文太は小さくため息をついた。

このところ、拓海が随分と大人びてきた。
それは当然のことなのだが、……文太には頭の痛いことであった。
拓海が『娘』から、『大人の女』になっていく。それにつれて、文太の心には、明らかに禁忌と言っていい感情が生まれつつあった。
それを娘相手に抱くことがいけないということは頭では分かっている。

(あんまり綺麗になられちゃこっちがもたねえよ。それにうちは……)

文太には懸念が一つ、あった。
それは藤原家にまつわる、血の宿命ともいえるものだった。


政志の工場を後にして、文太は歩いて家に帰った。酔い覚ましのつもりだった。
工場から家までの間には、薄暗い細い通りがある。
そこを歩いていると、声を、かけられた。

「遅いじゃん、オヤジ」

「……あ?」
後ろからの声だった。
文太が振り返ると、そこには拓海が立っていた。
「遅いから迎えに来てあげたの」
ふふ、と笑う拓海に、文太はすまねぇな、と言いかけてそして……はっとした。
「お前、」
「オヤジ」
「来るな!」
近づいてきた拓海に、思わず声を上げた。
「なんで?」
拓海は小首を傾げた。
「……お前、拓海じゃねぇな……」
文太には分かった。
分かってしまった。
そして悟った。
自分の「思い」が、誤った方向へと蓄積してしまっていたことを。

「……なんだ、わかるんだ」
小悪魔のような笑みを浮かべて、「拓海」は文太の前に来た。
そして背伸びをしてーーー文太に、口づけた。
「正解。オレ、拓海だけど拓海じゃないよ」

「やっぱり……」
「本物の拓海が白い拓海なら、オレは「黒い拓海」ってとこかな」

(続く)


白黒シリーズです^^
黒登場っ

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(白・♀拓海)
「へぇ……昔のオヤジってこんなんだったんだ……」
「ああ、ちょうど今の拓海くらいのころだな」


仕事帰り、ガソリンを入れに、そしてイツキや池谷の顔を見に、祐一のスタンドへ寄った。閉店が近い時間だったこともあって人気もほとんどなく、自然な流れで拓海は事務所で祐一にコーヒーをごちそうになり、イツキや池谷と近況を話し合った。
池谷からは秋名スピードスターズのメンバーが三人増えたという話を、イツキハチゴーをまた弄るんだという話を聞き、拓海は代わりにプロジェクトDの次のバトルの予定を話した。
そこへレジを締め終えた祐一が加わり、「昨日、家の掃除をしていたらこんなものを見つけたんだ」と、古い写真を数枚、見せてくれた。
それは祐一と政志、そして文太がまた若いころのものだった。
拓海にとっては、初めて見る文太の若かりし頃の写真だった。
今と少しだけ面影の違う秋名の峠で、それぞれの車の前に立つ三人。今よりもスリムな祐一、髪がもっとあった政志、そして、随分ととがっている感じのする文太。

色あせかけた写真の中には、凡そ25年前の三人がいた。
「店長随分若いっすね」
池谷が目をぱちくりさせた。
「店長これ乗ってたんすか! すっげー」
イツキは祐一の後ろに映る車に驚いているようだ。
「ああ、初めて買った車だよ」
当時は三人でつるんでいて、よくあちこちに走りに行っていたという話は何度か聞かされていたが、実際その写真を見るのは初めてのことだった。
「オヤジ、なんか悪そう……」
髪をオールバック気味にして、まだ未成年であろうにタバコを咥えて、ついでに派手目のスカジャンを着た文太はどう見たってとんがっている。
「確かに、拓海のオヤジさん、ちょっとすごいですよね」
池谷が笑った。
「ほんとだな。店長、どうだったんですか? 拓海のオヤジさんってこの頃……」
イツキが尋ねると、祐一は笑って「そりゃすごかったよ、その頃の文太は」と予想通りの返事だった。
「走りもすごかったけど、文太は喧嘩っ早いし口も達者だったし、敵も多かったもんだよ。峠じゃ車でバトってその後殴り合いなんてこともあったな……」
「ほんとですか、店長……」


(うちのオヤジ、まだあれで随分丸くなった方なんだ……)拓海はため息をついた。
「まあ名実ともに群馬エリアじゃナンバーワンだったからな。あの頃は血の気の多い走り屋が多くてな……」
昔を懐かしみながら、祐一はうなずいた。

「へぇ……」

古い写真の一枚を、拓海は祐一からもらった。
というより、文太に渡してほしいと預かったのだ。
文太は引っ越しを何回か繰り返すうちに古い写真を無くしたらしいから、よかったらこれを上げて欲しいと祐一に言われたのだ。実際、拓海も文太の若いころの写真は見たことがなかった。


帰宅すると、文太はまだ帰っていなかった。
「何だよ、オヤジったらまた飲みに出てんだ……」
店をさっさと閉めた文太は、売れ残りの豆腐と厚揚げを手土産に行きつけの居酒屋で一杯ひっかけているようだ。
「ったく、ダメオヤジなんだから……」
祐一から預かった写真をちゃぶ台の上に置くと、拓海はその前に座った。
「……若いころのオヤジかぁ……」
写真はちょうど今の拓海と同じ19の頃だという。
免許取りたてにしては随分な貫禄の文太に、拓海はつい目がいってしまう。
(結構カッコイイかも……)


文太の帰りを待つうちに、拓海はいつしかちゃぶ台に伏して眠ってしまった。


「おい、起きろよ、拓海」
「……うん、……」
肩をゆすられ、文太の声がして。
拓海はゆっくりと目を覚ました。
「あれ、あ……オレって寝てた……?」
目を開けると明るい。
自分が転寝をしていたことに気づいて、拓海は慌てて目を覚ました。
「いっけない、お風呂しなきゃ……」
「風呂ならもう準備したぜ」
「えっ、ありがとオヤ……ジ……?」
振り返った拓海は、テレビの前で胡坐をかいている「文太」の後姿を見た瞬間、声を失った。
「……!」
その声は確かに「文太」だった。
が、後姿は「文太」ではなかった。
派手なスカジャン。今よりも細い肩。
白髪のない髪。
「おう、拓海」
振り返った顔は、そう。
あの写真の中の、若い「文太」だった。
「え、ええっ……!」
拓海は慌てて、ちゃぶ台に置いた写真を手に取った。
「え、あ、え、っ……え、」
「なんだよ」
振り返った「文太」が、膝で寄ってきて、拓海の手にしている写真を取り上げた。
「オヤジ……?」
「ああ、そうだけど」
ニンマリと笑った「文太」は、確かに、件の写真の中の「若い頃の文太」そのものだった。

「お前のオヤジだぜ、拓海。ただし、19歳のな」

「文太」は古い写真をひらひらとさせながら、にやりとした。


(続く)


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Twitterでビルさん、ポピーさんの19歳文太さん絵やネタに触発されまして……。
44歳文太さんと19歳文太さん、19歳♀拓海も二人に分裂? してしまうシリーズです。ブログにて思いついたときに書き書き予定です。
19歳文太さん×24歳涼介さんとかいいですよねじゅるり。

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毎日楽しいことはないかと探しています。
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なんでもござれ。バッチ来い。
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